近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト裁判日程

■ INFORMATION ■
19年6月  実習生の皆さんへ

19年5月  週刊金曜日に掲載

19年4月  和解のご報告

19年3月  被控訴人陳述書(4)
19年3月  被控訴人陳述書(3)

19年1月  第3回期日傍聴のお願い

18年12月  第2回期日傍聴のお願い
18年12月  過労死シンポジウムでのスピーチ

18年11月  控訴審の争点と展望
18年11月  裁判についての寄稿
18年11月  実習時間厳守を大阪府へ

18年10月  実習1単位45時間について
18年10月  裁判判決に関する手記
18年10月  高裁傍聴のお願い

18年8月  6月28日 地裁判決文
18年8月  6月28日 地裁判決文
18年8月  地裁判決の概要説明

18年7月  近リハ前ビラまき
18年7月  大阪府理学療法療法士協会回答
18年7月  質問主意書提出と回答

18年6月  辻クリニック Nバイザー証言
18年6月  原告最終準備書面より(6)
18年6月  原告最終準備書面より(5)

18年5月  大阪地裁判決日と報告会
18年5月  原告最終準備書面より(4)
18年5月  原告最終準備書面より(3)

18年4月  原告最終準備書面より(2)
18年4月  理学療法療法士協会へ申し入れ
18年4月  近リハ合格率について(更新)

18年3月  原告最終準備書面より(1)
18年3月  週刊金曜日に掲載
18年3月  判決期日が決定しました

18年1月  証人尋問を終えて
18年1月  裁判傍聴レポート2
18年1月  裁判傍聴レポート1

17年12月  12/13証人尋問レポート
17年12月  カリキュラム改善検討会の見解
17年12月  カリキュラム改善検討会へ申入れ

17年11月  証人尋問スケジュール案内
17年11月  11/23支援者集会ご報告
17年11月  裁判支援へのビラ撒きを実施
17年11月  11/23支援者集会のご案内

17年10月  証人尋問日程が追加に
17年10月  原告準備書面20

17年9月  近リハ、またも定員超過
17年9月  毎日新聞に掲載されました>

17年8月  11/23支援者集会のご案内
17年8月  証人尋問日程が決まりました
17年8月  被告準備書面より

17年7月  近リハの経営と法令違反
17年7月  原告準備書面19
17年7月  原告準備書面18

17年6月  実態調査の結果発表
17年6月  カリキュラム改善検討会発足

17年5月  近リハの規則違反について
17年5月  原告準備書面17
17年5月  原告準備書面16

17年4月  近リハ合格率に関する分析
17年4月  近リハ合格率について(更新)

17年3月  厚生労働委員会で取上げ..
17年3月  養成校への実態調査内容

17年2月  養成校に関する情報開示請求
17年2月  近畿地方各府県県担当部署

17年1月  原告準備書面15を掲載し...

16年12月  近リハ合格率について(3)
16年12月  辻クリニック準備書面5…
16年12月  原告準備書面14を掲載し...
16年12月  調査要望内容について

'16年9月  大阪府の監督体制について
'16年9月  原告準備書面13を掲載し...

'16年8月  近畿厚生局と大阪府へ調査...
'16年8月  原告準備書面12を掲載し...
'16年8月  原告準備書面11を掲載し...

'16年7月  近畿厚生局へ行ってきました
'16年7月  症例患者に関する回答
'16年7月  原告準備書面10を掲載し...

'16年6月  再質問への答弁書(全文)
'16年6月  再質問主意書全文を掲載し…
'16年6月  再質問主意書が提出され…

'16年5月  症例患者に関する求釈明
'16年5月  近リハ国家試験合格率について(2)

'16年4月  支援の会、会員登録のお願い
'16年4月  原告準備書面9を掲載しました
'16年4月  '16年近リハ国家試験合格率

'16年3月  内閣に質問主意書が提出され…
'16年3月  国会へ行ってきました

'16年2月  近畿リハビリテーション学院国家試…
'16年2月  原告準備書面8を掲載しました
'16年2月  辻クリニック反論内容記載し‥

'16年1月  原告準備書面7掲載しました
'16年1月  弁護士による裁判の経過報告

'15年12月 大阪府理学療法士会で・・・
'15年12月 支援の会、会員登録のお願い

'15年11月  辻クリニック準備書面3を…
'15年11月  原告準備書面6掲載しました

'15年10月  中国ブロック理学療法士学会…

'15年9月  原告準備書面5掲載しました

'15年8月  支援の会結成総会のご報告

'15年7月  支援メッセージ頂きました
'15年7月  弁護士による事件概要説明

'15年6月  支援の会、会員登録のお願い

'15年5月  原告準備書面掲載しました
'15年5月  支援の会結成会のお願い

'15年3月  第3回期日決定しました
'15年3月  第2回法廷内容掲載しました

'15年2月  サイトからのお願い

'15年1月  第2回期日決定しました
'15年1月  第1回法廷内容掲載しました
'15年1月  第1回法廷が開かれました
'15年1月  意見陳述内容掲載しました
'15年1月  訴状を掲載しました

'14年12月 週刊金曜日に報道されました
'14年12月 第1回期日決定しました

'14年11月 訴状を提出しました
'14年11月 毎日新聞で報道されました

近畿リハビリテーション学院,辻クリニック,評判,手記


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近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判日程  控訴審の争点と今後の展望 
平成30年10月
大野事件弁護団
弁護士 高橋 典明
◆1 一審判決 

 近畿リハビリテーション学院を運営していた被告髙寿会と実習先の辻クリニックを運営していた被告一裕会の双方に、実習生であった故大野輝民に対する以下のような安全配慮義務違反を認めて、原告に対する損害額全額の賠償を命じた。

 ① 被告髙寿会の安全配慮義務違反
・厚労省の指導要領にもとづき、臨床実習における学修時間が自宅における学修時間も含めて1週間あたりおおむね45時間以内となるように注意すべき義務に違反
・実習開始後の実習環境の調整等の義務に違反

 ② 被告一裕会の安全配慮義務違反
・厚労省の指導要領にもとづき、臨床実習における学修時間が自宅における学修時間も含めて1週間あたりおおむね45時間以内となるように注意すべき義務に違反
・実習生に対し、精神障害等の心身の不調をもたらすような強い心理的負荷を与えないよう十分配慮する義務に違反

 ③ 故大野輝民の自死に対する予見可能性は、両被告にあったと認定


◆2 髙寿会(近畿リハビリ学院)の控訴理由 

 ① 厚労省指導要領では1週間の実習時間に関し、自宅における学修時間も含めて45時間とするような規制はしていないので、原判決の解釈は誤っている。

 ② 実習開始後の実習環境を調整すべき義務というのは抽象的で、具体的にどのような行為を行えば義務を果たしたといえるか疑問であり、そのような義務はない。

 ③ 故輝民の自死についての予見可能性は髙寿会にはなく、自死は究極の自己決定であり、他者がその意思決定を知ることは著しく困難である。


◆3 一裕会(実習先辻クリニック)の控訴理由 

 ① 厚労省指導要領では1週間の実習時間に関し、自宅における学修時間も含めて 45時間とするような規制はしていないので、原判決の解釈は誤っている。

 ② 教育者側に暴行や人格的攻撃などの社会通念に反する行動がない場合には、安 全配慮義務違反があるとすべきではない。

 ③ 実習指導者は、故輝民が自殺にいたる可能性などおよそ予見し得なかった。

 ④ 原判決には事実誤認が多く、公平な事実認定をしていない。


◆4 被控訴人(大野)の反論準備書面のポイント 

 ① 政府及び厚労省自身が、実習及び自宅での学修時間等を含めて1週間45時間程度とするよう指導要領で規定していることを明言しており、控訴人らは、それすら知らずに最重点の控訴理由としている。

 ② 学院側は、本件が2度目の自死の事例であり、輝民の実習中から、過度な精神的負担により実習生が自死するかも知れないと言うことは十分予見可能であった。また実習先も、前年度の輝民の精神傷害の発症を知っており、また指導者は、前回実習生が自死した事件当時の同級生であったにもかかわらず、輝民に精神的プレッシャーをかけ続けており、実習先にも自死の予見可能性はあった。

 ③ 学院は、自ら大阪府に提出した報告書の中で、建前としては、学院に実習生に対する様々な安全配慮義務があることを認めていながら、実際には何もしていなかった。

 ④ 実習先指導者には、輝民を故意に追いつめるような発言を行い、実習中止を示唆するなど、ハラスメント的な対応があったことを原判決が詳細に認定している。

 ⑤ 一裕会は事実誤認を主張するが、原審の指導者の証言のみを我田引水的に引用しているのにすぎないのと比較し、原判決は証拠に基づき詳細に事実認定をしている。


◆5 控訴審審理の争点と見通しについて 

 控訴審第1回の裁判長の訴訟指揮ぶりからすると、1審判決の大筋は維持しながら、損害額の算定方法を変えるべきか否か、また亡輝民氏側の素因や過失相殺で損害額を減額すべきか否かが控訴審の争点になるのではと考えられる。
 弁護団としては、損害額が減額されないように大きな努力を注ぐ方針であり、控訴審は短期決戦が予想されるので、引き続き力強いご支援をお願いしたい。





近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判日程   原告弁護士による地裁判決概要説明 
平成30年8月
大野事件弁護団
弁護士 上出 恭子
◇判決が認定した実習先「辻クリニック」の責任

 ① 輝民に対する実習指導者Nの言動は、「一方的に不安感や屈辱感を与えるものであって、過度に心理的負荷を与えるものである」、「一方的に威圧感や恐怖心、屈辱感、不安感等の過度に心理的負荷を与えるものである」として、注意義務に違反する行為と認定。

 ② 輝民の実習現場と自宅での一週間あたりの学習時間の合計が、厚生省指導要領基準の45時間を大幅に超えて平均約70時間になっていたいた。「臨床実習を指導する立場であるNは、輝民に対し具体的な作業時間や睡眠時間等の確認を行うなどし学習時間の実情を把握し、それが質的・量的に過重なものとなっていないかを検討し、それが過重な場合には改善するための指導をするべきであったにもかかわらず、輝民に対して前記確認すらしたことがなかった」ことが注意義務に反する。

 ③ Nは平成20年に実習先のハラスメントで自殺した近畿リハ学院の学生Aと同級生であり、実習先のハラスメントが原因で学生が自殺に至る場合があることを認識しており、大野が自殺に至ることは充分予見できた。

特に特質すべきは、実習生の受け入れ先の責任について、

被告一裕会は、「そもそも教育の本質として強制的・懲戒的側面があることは否定できないため、スーパーバイザーには実習生に対して一切の疲労や心理的負荷を与えてはならない義務があるとするのは不合理である。」と主張して争ったのに対して、

裁判所は、「臨床実習に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、実習生の心身の健康を損なう危険性があることは明らかであることをも考慮すると、本件実習における輝民のスーパーバイザーであったNは、実習生として受け入れた近畿リハ学院の学生である輝民に対し、前記安全配慮義務の内容として、本件実習に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して輝民の心身の健康を損なうことがないようにすべき注意義務を負っていたと解するのが相当である。」

として、平成20年3月24日の電通最高裁判決の判示を意識した根拠で、注真正面から意義務を認めたことです。

◇ 判決が認定した近畿リハビリテーション学院の責任

 ① 近畿リハ学院は、実習先指導者Nの言動で、輝民が過度の心理的負担を受けていることを認識しながら、実習環境改善の具体的措置を講じなかった。
 ② 前記②と同様の違反を認定
 ③ 同学院は、平成20年にも学生が実習中に自殺しており、実習先のハラスメントで実習生が自殺に至る可能性を十分に認識できた。またNによる輝民に対する心理的負荷を与えることが明らかな違法発言を認識し得たことから、輝民の自殺を予見できた。





近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判日程   証人尋問を終えて 
2018年12月27日
原告 大野佳奈子
去る2017年12月13日、27日、多くの傍聴者が見守る中、近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判の証人尋問が行われました。傍聴にお越しいただいた方々および、傍聴席が足りずに傍聴いただくことが出来なかった多くの方にこの場をお借りして、心よりお礼申し上げます。また、わたし達の裁判のために、客観的な証言をして頂いた、近畿リハビリテーション学院の元教諭のお二人には心より感謝申し上げます。

 これまでは書面でしか自死した夫に何があったのかを知ることが出来なかったのですが、証人尋問で被告辻クリニック及び近畿リハビリテーション学院の関係者から直接証言を聞くことが出来、夫が当時どのような環境に置かれていたのかを痛切に知ることが出来ました。

この証人尋問を通して、私の夫は無責任とハラッサーを放置する組織の中で一番弱い立場に置かれ、自死に追い込まれたのだという事を確信することが出来ました。

証人尋問中、近リハにしろ辻クリニックにしろ、その責任者たちは「わたしは知らない」という発言を繰り返しました。

近リハについては、これまでわたし達が主張してきた「無責任」さを十分に証明にすることが出来たと思います。

辻クリニックについては、これまで彼らが文書でしてきた主張がいかにその場しのぎのつじつま合わせの主張であったかを、尋問で明らかにすることができたと思います。
裁判を傍聴いただいた方にはよく分かって頂けたと思いますが、辻クリニックの主張は世間の常識とかけ離れたものであり、この主張を繰り返すことは理学療法業界が世間から逸脱した業界であると繰り返し主張すると言うことでもあります。

過労と睡眠不足、そこにパワハラが加わった時、誰にでも精神の変調を来す可能性があるという事実は、もはや世間一般の常識になっています。理学療法士の臨床実習だけがこの「常識」の外に存在できるはずがありません。

わたしはこの裁判で裁判所が、理学療法療法士の臨床実習を改めるきっかけとなる判決を出してくれることを願っています。判決を得ることは、実習での悲惨な経験談や卑劣なパワハラに遭っていると言うSOSをこのサイトに送って下さった方々に対する、わたし達の使命です。そして、今後このようなハラスメントの放置が赦されない業界になることが、この裁判の目的です。

証人尋問での証人の発言については、今後当サイトで順次明らかにしていきます。

どうぞ引きご支援を賜りますようお願いします。


 皆様からの情報の提供をお願いします。※メールアドレスはページ下に記載しています。
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近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判経過   原告弁護士による裁判経過報告 
平成28年1月8日
大野事件弁護団
弁護士 髙橋 典明
1、はじめに
まず、法廷傍聴やネットを通じて大事件を支援してくださっている多くの皆様に感謝申し上げます。
 この事件は提訴当時にテレビ・新聞で報道され、弁論時には多くの傍聴者で法廷が一杯になるほどでしたが、その後のインターネットを通じての反響の大きさには驚くばかりで、寄せられたご意見の中には貴重な情報提供があり、また専門学校における実習のあり方についての学術的な示唆もあり、弁護団としてもネットの持つ情報発信力と情報収集力の凄さを強く感じているところです。 以下に、これまでの裁判経過の概要をお知らせし、今後も皆様からの変わらぬご支援をお願いしたいと思います。

2、提訴から今日までの裁判の経過について

原告大野佳奈子さんが医療法人髙寿会(亡夫の通学先の近畿リハビリテーション学院を運営)及び医療法人一裕会(亡夫の実習先の辻クリニックを運営)を被告として、亡夫の大野輝民氏を自死に追いやった責任を明らかにしようと訴訟に立ち上がられてから1年余が経過しました。大阪地裁第22民事部(合議係)での審理は、平成27年1月28日の第1回弁論から同年12月25日まで7回開催されました。裁判所での審理内容は、原被告双方の主張整理という手続で、双方から互いの主張及びそれに対する反論を行うといもので、第1回から3回目までの審理は法廷において実施され(傍聴された方もおられると思います)、第4回から7回までは弁論準備という形式での非公開審理が行われました。
これまでに裁判所に提出された原告・被告の主張書面は以下のとおりです。

  原告(大野側)           訴状、準備書面1から7まで
  被告(近畿リハビリテーション学院) 答弁書、準備書面1から5まで
  被告(辻クリニック)        答弁書、準備書面1から3まで

3、裁判の争点について

大野裁判では、亡大野輝民氏が実習中に、実習先から抜け出して自死するに至ったのは、実習先のパワハラ的実習指導により亡大野氏が精神的にギリギリのところまで追い詰められていたことが原因であり、そのような実習先を選定し、亡大野氏からのSOSに対して、専門学校が実習先と話合い指導方法を改善させていれば、亡大野氏の自死は防止できたと原告側は主張しています。このため、原告としては、実習先、専門学校の双方が、専門学校の学生であった亡大野氏に対する安全配慮義務を怠ったとして、その責任を追及している訳です。
 これに対して実習先の辻クリニックは、「教育である以上、実習指導が厳しいのは当たり前」という前時代的な認識を表明し、「指導内容に問題はなく、実習後に食事に連れて行ったこともあり配慮はしており、亡大野氏の突然の失踪は予想できなかった。」等と主張し、安全配慮義務違反の事実を全面的に争っています。
 また、亡大野氏を辻クリニックに送り出した専門学校の近畿リハビリテーション学院側も、「辻クリニックはこれまで多数の学生の実習指導実績があり、実習先の選定に問題はない。」「辻クリニックに対しても、実習前に亡大野氏のことをキチンと説明し、前年に亡大野氏が実習先から失踪した事実も伝えている。」「亡大野氏からの相談には、電話やメールで相談に乗っており、実習先とも電話で話合いをしており、学校としての対応には問題はなかった。」とやはり責任を全面的に争う姿勢を示しています。

4、証拠調べに向けて
以上のとおり、被告側の専門学校や辻クリニックが責任を全面的に争う姿勢を示していますので、原告側としては、今後の証拠調べにおいて、実習の実態や学校側のフォロー体制の欠如について、証人を立てて、丁寧に立証していく必要があります。
 証拠調べでは、相当程度専門学校の教育や実習の前近代的でひどい実態が解明されるものと考えています。
 裁判では、証人尋問の段階になりますと、また法廷において公開で審理されることになります。その際には、また多数の傍聴をお願いする次第です。

以上

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近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判日程   原告弁護士による事件概要説明 
平成27年7月7日
大野事件弁護団
弁護士 髙橋 典明
1 実習先から失踪後自死
近畿リハビリテーション学院(以下「同学院」という。)に理学療法士の資格取得を目指して通学していた大野輝民(テルヒト)氏(当時39歳)は、平成25年11月29日に実習先の辻クリニックから失踪し、翌30日未明に神戸市の須磨浦公園で自死を遂げた。

2 近畿リハビリテーション学院では2件目の自死事件
平成20年9月にも、学院では実習中に自死した専門学校生がおり、本件は同学院で2件目の事件となる。 輝民氏の妻である大野佳奈子さん(原告)は、それまで理学療法士の資格取得を目指して寝る間も惜しんで勉学に励んでいた夫の自死の理由を知りたくて、同学院の同級の学生、実習先の連絡先を探し、関係者と個別に面会して事情を聞き出し、また原告のご家族は、同学院や専門学校の教育や実習の実態について約1年をかけて様々な調査を続けられた。その結果、輝民氏の自死は、輝民氏個人の事情や性格によるのではなく、実習先の辻クリニックにおける実習中の指導の域を超えるパワハラや不眠が続いたことによる「抑うつ状態」により引き起こされたものであると原告や家族は確信を抱くに至り、実習中の直接のパワハラの加害者ともいえる辻クリニックのみならず、輝民氏の実習中の自死を防止できなかった同学院の安全配慮義務違反を理由に、クリニックと同学院の両者の法的責任を追求する決意を固めるにいたった。

3 損害賠償請求訴訟の決意
原告と原告の家族は、輝民氏を自死に追い込んだ実習先の辻クリニック及び輝民氏の自死を防げなかった同学院を経営する医療法人(2法人)を被告として損害賠償請求訴訟を輝民氏の一周忌である平成26年11月28日に提訴し、同訴訟は現在大坂地裁民事22部(合議係)で継続中である。

4 提訴の際の記者会見
これまで中学や高校でのいじめ問題は社会的に大きくクローズアップされ、マスコミでも度々取り上げられ、その防止の必要性が議論されている。ところが、専門学校の教育現場でのいじめやパワハラ問題は、ほとんどこれまで取り上げられたこともなく、監督官庁である厚生労働省も問題意識すら持っていないと思われる。原告家族の調査の中で、特に実習中にパワハラ的な指導が横行し、徒弟関係のような厳しい上下関係のもとで、時には精神的虐待に等しいようなことが「指導」の名のもとに行われている実情が明らかになってきた。医療系専門学校における教育については、特に実習先において、国家試験の後は理学療法士として「患者の健康と命を預かる以上、厳しくて当然」という風潮があり、睡眠時間も実習中はほとんど取れないのが「当たり前」、指導者は自分も実習中は厳しくやられたから同じように厳しくやるという「報復的意識」での応対、指導者の個性による嫌がらせ等が横行している実情が明らかになった。他方、学生の方は、リーマンショック以来の雇用不安や派遣労働が蔓延する中で、少しでも安定した職を求めて、国家資格を求め、輝民氏のように、職を変えて、親から学費を借金してまで専門学校に通う学生は、実習期間中に精神的に追い詰められ、実習を完了出来なくなって、留年や中途退学する学生も多い。理学療法士の学会では、このような実習のあり方は根本的に見直されるべきであるという意見も出て来ている。
原告は、輝民氏の裁判を通じて、このような専門学校生が置かれた実態に光をあて、今後同様の不幸な事態が二度と起こらないよう社会に問題提起しようと困難な裁判の道を選んだ。現在、原告を支援する会が「理学療法士の実習問題を問う 近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判を通して考える」というホームページを開設しており情報発信がなされているが、このサイトには多くの方からの情報提供や意見が寄せられている。

5 何故輝民氏は自死にまで追い込まれたのか
① 経過 
H22年 社会人経験を経て36歳のときに同学院の第2理学療法科(3年制・夜間部)に入学。学院での成績は優秀で、1年生の後半からは学級委員長も勤めていた。
1年生当時の実習 H23年3月14日~18日(学年末ころ)
2年生当時の実習 H23年8月1日~12日(中間)
 H24年2月13日~3月9日(学年末) これらの実習は何ら問題無く終了。
3年生当時の実習2ヶ月間の実習履修 卒業の要件(2回の実習)
1回目  H24年9月3日~11月19日
実習中の1日行方不明事件  H24年9月20日に発生 輝民氏は、実習中の睡眠不足による心身の疲労による心理的健忘症を発症し、1日間実習先から行方不明となる事件があった。輝民氏は、その後クリニックを受診し、「心因性健忘の疑い」と診断された。 クリニックから同学院へは「過労状態による症状。負荷が減った状態では病的と判断される精神状態は認められない。実習については負荷が大きくなりすぎないよう相談しながらすすめてください。」との情報が提供された。 同学院では、この1日の行方不明事件を理由に即「実習の単位取得不可」の扱いとし、輝民氏の留年が決定された。原告の父(輝民氏の義父)は、何とか留年せずにすむよう学院と交渉したが、学院長は「4年生の学校に入学したと思って、私に大野君をもう1年預からせてください。立派に卒業させますから。」と言明したため、留年を受け入れざるを得なかったが、この留年は輝民氏に大きな心理的負担となった。
その後3年時の最終の実習(2回目H24年11月5日~12月21日)があったが、この実習については、輝民氏は、実習を無事済ませただけでなく、実習先からも気にいられて、卒業後就職の内定ももらう程であり、輝民氏が優秀な学生であるとの評価も受けていた。 留年後(事実上4年目)、H25年4月~8月 実習以外の単位は取得済みのため、輝民氏は休学。 同年6月に実習先が辻クリニックに決まり、同病院が厳しく、生徒間で極めて評判の悪い先であったため、一度実習に失敗していた輝民氏は妻である原告や担任に対して実習先について不安をもらしていた。

② 1年留年後の再実習での出来事
平成25年11月5日から辻クリニックでの実習が開始された。この実習先では、実習生のためのロッカーや休憩設備もなく、実習生は患者用の空いたベッドのうえでパソコン作業をさせられていた。 輝民氏は、実習のデイリー、レポートなどを毎日深夜(午前3時頃)まで作成。「指導者の声が小さく聴き取りにくく、聞き返すと機嫌が悪くなるので困る。」と妻にこぼしていた。 11月12日には輝民氏が実施していた患者の痛覚検査の中止が指導者から突然指示され、輝民氏はその理由も良く分からず戸惑った。翌13日に前日の検査を中止したためデイリーに記載していなかったことを輝民氏は指導者から責められ「実習をボイコットしているのと同じ。」「今日はもう帰るか。」と言われる。 輝民氏は緊張して待機し、謝罪をしたところ、「次やったら終了」と実習の中止すら示唆された。きまじめな輝民氏にとっては、実習環境が極めてストレスが高く、そのことを輝民氏はメールで担任に報告している。 11月15日、前日担当患者が休んでいたため、デイリーに記載してなかったところ、それを叱責され、輝民氏が黙っていると「無視するのか。」と詰問され、強い調子で「帰れ。」と指示された。このため輝民氏はクリニックを出て、学院に行き、担任へ「実習先から帰れと言われた。」と相談にいった。 11月21日にも担当患者の歩行テストの件で叱責をうけている。 11月29日は辻クリニックで初期症例発表の予定であったが、前日の28日夜には、輝民氏は帰宅後布団をかぶって泣いているように見え、この様子からは11月28日までには輝民氏は実習先のプレッシャーにより限界状態にあったと考えられる。そして29日にはほとんど寝ずにクリニックに出掛けたが、「発表用のデータを忘れた。」との嘘の口実を言って、午後に「自宅に戻る」と言ってクリニックを出たが、その後連絡が取れなくなり、翌30日に神戸市内の公園内で自死していたのが発見されたとの連絡が警察からあった。

③ 自死にいたった理由
輝民氏は自死にあたり遺書を残していた。 遺書には、「本当にもう無理。情けない自分とこれ以上向き合えません。もう終わらせたい。本当に自分勝手ですいません。」との記載があった。 輝民氏は、昨年の実習を完了出来ず留年したことを大変気に病んでおり、周囲からの援助で何とか頑張って来たが、辻クリニックの実習を継続することが限界となり、「もう無理」と考え、追い詰められて自死に至ったものと考えられる。 自死にいたるまでに、輝民氏には抑うつ状態、不眠、食欲不振等の症状が出ており、死亡する直前には「うつ病」に罹患していた可能性が高い。

6 近畿リハビリテーション学院と実習先の辻クリニックの法的責任
① 学院
学院は専門学校として、在学中の専門学校生の生命・身体に対する安全配慮義務を負う。 学院は輝民氏が前年度の実習中の心理的負荷から心因的健忘を発症し、失踪したことを知っていながら、辻クリニックの実習において輝民氏からメールや訪問で何度もSOSを受けながら、具体的な対処を何らせず放置していた。 学院では以前にも実習中に自殺者を出しており、適切な対応を取っていれば輝民氏の自死は防止出来たと考えられる。よって、学院には、民放415条に基づく債務不履行責任(安全配慮義務違反)がある。
② 辻クリニック
実習の指導という名の元に、パワハラ的な指導を行い、かつ、「帰れ」「実習中止」といった脅迫的言動で実習中の輝民氏を追い詰めた辻クリニックの言動は民法709条の不法行為に該当する。また、同学院から実習先として委託を受けている以上、同学院と同様に学生に対して安全配慮義務を負担しており、債務不履行責任(安全配慮義務違反)もまた認められる。


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近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判日程  第1回期日 意見陳述 
(近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する自死事件裁判)
 「なぜ裁判を起こしたのか」

夫 大野輝一は、2013年11月30日に実習先である辻クリニックでのハラスメントを苦に自死しました。

わたしは、理学療法士と言う道を、この近畿リハビリテーション学院に夫が通うことを応援したことをとても後悔しています。こんなに辛く苦しいハラスメントに満ちた道だと知っていれば、あんな優しいまじめすぎるほどまじめな夫に、進学を勧めたりしませんでした。わたしも夫もこの実態を知らなかったことが、この悲劇を生んだと思っています。

近畿リハビリテーション学院は「患者の命を預かる理学療法士になるためには、厳しい対応をせざるを得ない」と言うセリフを常套句に学生を脅します。しかし、当の学校は生徒の命など全く顧みず、利益追求にひた走ります。
これまで何人の学生がこの卑怯なセリフを鵜呑みにし、失意の内に去って行ったでしょうか。その証拠に、5年間と言う短い期間に夫も含め2名もの学生が自死に追い込まれました。

また、私が夫の死後、関係者の方からいろいろ事情をお聞きした内容からすれば、
実習先のバイザーは「実習の成否」を握り学生に不当なハラスメントを繰り返し、それが常態化した実習地では自分が行っていることがハラスメントであることの認識さえ抜け落ちていると感じざるを得ません。

これらの問題は、この近畿リハビリテーション学院と辻クリニックだけの問題なのか、そうではなく、世の中の見えないところで多くの学生が挫折し、精神を病み、時には、夫のように自殺している人が他にもいるのかもしれません。

まず、私のように知らなかったと後悔する人が出ないためにも、知ってほしいのです。1学年80人、3学年しかない小さな専門学校で5年間に2人もの自殺者が出ていることを、それも、ともに実習中に起こったという事実を広く世に明らかにする必要があると確信しています。

この裁判を通じて、夫がなぜ自死をしてしまったのかその原因を追究し、その責任の所在を明らかにすることを強く望みます。

また、このような被害をなくすために、誰が救うべきなのか、何がどう変わるべきなのか、管轄する国の機関は何を指導してきたのか、世に問うてみたいです。

                   2015年1月28日 原告:大野佳奈子


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近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判のサイト 裁判日程  事件における手記 MEMO
   一周忌に当たって

 余りにも突然の訃報だった。昨年11月30日、東京出張中の身に「輝民さんが死んだ、すぐ連絡を」のメールが届いた。「急病か?」「交通事故?」の問いに「自殺だ」と、携帯の向こうで私の妻が号泣している。
 5年前にわたしの次女と結婚し仲睦まじい39歳が「なぜだ・・・?」「どうして私に一言・・・」、疑問と悔いが交錯し「早く」「急いで」と焦るが足が前に出ない。

 彼は高校卒業後、中小零細企業や「非正規」を転職し、夫婦で相談の上「将来安心な仕事」をめざし、35歳で理学療法士養成専門学校・近畿リハビリテーション学院夜間部に入学した。
 成績は学年トップクラスで3年生まで学級委員長を務め、死後に出会ったどの教官も”最高の生徒””優秀な生徒”と称え、就職も内定しており4か月後には卒業を控えていた。 だが、昨年11月29日、最後の実習先だった辻クリニックを飛び出し、須磨浦公園で夜半に縊死した。
近畿リハビリテーション学院では5年間に二人目の自殺だ。

 近年、若者の雇用環境が厳しい。一度"非正規”につくと”正規”の再就職が至難なだけに、資格を取得し安定した職をと、入学金と授業料の数百万円を工面し”最後のチャンス”と勉学に励む30代が増えている。
多額の借金を背負った彼らにとって卒業や就職の失敗は絶望を意味する。それだけに彼らの多くは勉強に必死だ。輝民も夫婦の蓄えと実家から借りた数百万円を投資し、近畿リハビリテーション学院夜間部に入学した。

 しかし彼は、最後の実習先である辻クリニックのバイザーから「帰れ」等のいわれなき叱責、意図的な無視、衆人面前での罵倒などのハラスメントに苦しみ、さらに膨大なデイリーレポートに追われ、心身を疲弊して自ら命を絶った。
彼が新しい仕事に希望を持って生きようとする真剣な姿を知る我々家族は残念でならない。

 「専門学校では実習生の自死や失踪が時々ある」と元教官は今になって語るが、かかる近畿リハビリテーション学院に入学させたことを悔いる毎日だ。

 11月28日は彼の一周忌。わたしたち遺族は彼の無念を晴らし、第三、第四の犠牲者を出さないために、安全確保義務を怠った近畿リハビリテーション学院を運営する医療法人「高寿会」と、実習先である辻クリニックを運営する医療法人「一裕会」にその責任を問うべく提訴に踏み切った。

                       2014年11月30日 義父